この度、本書「不正競争防止法の解説と裁判例」を上梓する運びとなっ
た。その基礎は、4年前の2004年、図らずも東京都立大法科大学院へ実
務家教員として採用されたことにある。その前年、東京都立大の冬季集
中講義として知的財産法を担当することになり、特許法や商標法と共に、
不正競争防止法についても講義用レジメを作成した。2004年からは法学
部で、2005年からは法科大学院で講義のために、レジメを加筆訂正した。
時は恰も知的財産法時代に突入して、法改正は毎年の如く繰り返され、
またこれに呼応した形で、多くの裁判例が出された。
不正競争防止法についても例外ではなく、むしろ特許権や意匠権、商
標権の存在なしに、営業上の利益の侵害行為や規律違反行為に対して、
特許権侵害と同様の救済を受けられる不正競争防止法の活用が盛んに
なってきた。裁判例は多く、独自の法改正もるる行われている。最初は
数枚のレジメでスタートしたが、現在では約2倍となった。僅か4年間
の講義であったが、受講生中から知財関係業務へ進んだ者が数名出た。
嬉しい限りである。
折しも、2006年2月から、法学書院発行「弁理士受験新報」に、「不正
競争防止法の解説と裁判例」と題する解説を20回に亘って連載する機会
を得た。編集部の計らいで、前掲講義レジメを基にして執筆することが
出来た。本書は、これに補筆、訂正等を加えて纏めたものである。
本書は、以下のような特徴を有していると思う。
○出来るだけ多くの裁判例を掲載した。特に、著名表示冒用行為や営
業秘密不正行為については、公表判決で、該当するとされた裁判例は総て
掲げた。刑事裁判例についても、同様である。
○不正競争防止法の解説については、比較や参考としては僅かに商標
法を持ち出したが、商標法の裁判例等で代えた例はない。
○通用除外規定については、直接的に争われた事例のみを掲載した。
例えば、周知表示混同惹起行為において現れた商品の普通名称に係る事
例は参考として区別した。
解説には未熟な点があると思われるが、裁判例の紹介に多くの紙幅を
裂いて、不正競争行為の実例として、また実務上の便宜にも供したつも
りである。今後も裁判例や関係資料の収集、分析は継続したい。
本書発行に当たり、多くの方々にお世話になった。大学での講義のきっ
かけを作って下さった渋谷達紀早大数授、特許庁審査官時代からご指導
戴いた石川義堆さん、後藤晴男さん始め、多数の先輩、同僚達である。
感謝に堪えない。その代表として、首都大学東京社会科学研究科長前田
雅英教授に、序文をお願いしたところ、お引き受け戴いた。身に余り、
光栄至極である。法科大学院での講義の記念としたい。
また、社団法人発明協会出版チーム、前掲連載の際にお世話になった
法学書院編集部の方々にも厚く御礼を申し上げる。
2007年12月
工藤 莞司