主な内容
地方自治体の番号制度の活用に立ちはだかる「世帯」と「個人」 相反する2つのデータの取り扱いを如何に克服すべきか…
行政における個人データの流出等の問題が懸念されている。個人データの保護対策に対しては、日本国憲法では個人の尊重を規定し、個人情報保護法制においても個人の権利利益の保護が目的とされ、手続的に保障されている。
一方、地方自治体の行政サービスにおいては、社会保障の給付サービスを中心に「世帯」単位で提供されるものが多く、結果として住民の個人データも「世帯」単位で利用されている。例えば、個人の権利として保障されている選挙に関する「投票所入場整理券」ですら世帯単位で一括郵送されているのが実態であり、この面での検討は、ほとんど行われていない。
本書では、こうした地方自治体の個人データの利用実態に着目し、世帯単位という行政サービスの原則と個人単位という個人情報保護法制の原則との齟齬や問題点を、地方自治体の行政の実務に即して具体的に把握し、両者を調和させるべく「地方自治体における住民の個人データの利用と保護のあり方」について考察する。