主な内容
いつの時代も人々は神を信じてきたし,今日でも多くの人がそうである。人々の神の描き方や関わり方は多様で,時に意見の不一致だけでなく紛争や戦争を引き起こした。
著者は「神とは誰か,あるいは何なのか?」を問う。神とはあらゆる言葉や理解を超えているが,ただ神についての理解はいつの時代も同じではない。神は絶対に変化しないのだろうか。そうだとしても,各宗教において時代により神の描写や性格づけは劇的に変化する。古代インドで生命とその維持,さらに破壊をもたらすディアウス(天空)は,ギリシアに伝わりゼウスとなった。
神への問いについて哲学者や神学者が厳密に答えた言葉や,それとは対照的に生き生きと神に語り掛ける詩人や信者たちの言葉が,私たちに伝える意味を考える。また人はなぜ神を信じるのか。それは生活や経験の中から生じた結果である。
アブラハムの宗教であるユダヤ教,キリスト教,イスラム教の一神教とインドの宗教の考察をとおして,異なる神の性格と描写が確立された過程を述べ,さらに神の性格づけがその初期から発展し,変容した過程を明らかにする。公平で中立的な態度で神を分かり易く説明した本書は,神に憧れると同時に疑問を持つ読者にとって必読書となろう。