書籍詳細のご紹介
交際費に生かす税務


交際費税務に生かす判例・裁決例集50選
 
編著者
林 仲宣,四方田 彰,角田敬子
発行所
税務経理協会
定価
2,310円(税込)
ISBN
978-4-419-04992-8
発行日
2007年9月1日
判型
A5
頁数
248
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主な内容
はしがき

 10年以上も昔のことだが,税理士会の支部懇親旅行でのバスのな かの出来事である。時間つぶしにながされた「寅さん」の古いビデ オで,イライラした太宰久雄演じる「タコ社長」が,従業員に向かっ て,「一杯やろう。交際費でパァーとやろう」と叫ぶシーンがあった。 それを見た突然の車内の大爆笑に,バスガイドが驚いて振り返り, 運転手もパック・ミラーで客席を確認した姿が記憶にある。それも 当然であり、ふつうの乗客が笑う場面ではない。

 日頃,中小企業を相手にしている税理士にとって.交際費は役員 給与とともに経営者からの相談内容の中心である。とくに交際費は, 日常的に発生ずるものであり,その内容や事実関係から費用性すら も検討することを余儀なくされるなど,厄介な支出も出てくる。そ ういう実態を知る者からすれば,山田洋次監督の脚本は,極めて的 を射た現実的な台詞だと思えた。同時に,従業員と一緒に呑むとい う場合であっでも,福利厚生費ではなく,交際費といわせていると ころに妙に感心したのである。

 交際費課税についての解説書や解説記事は少なくないが,その多 くは,ケースバイケースの事例解説となっている。課税の立場にあ る執筆者の見解は,課税庁において集積された否認事例に基づく展 開であり,またそれらの事例を網羅できるほど詳細な通達に立脚し ている。一方,納税者側に立つ執筆者は,通達の内容を軸に,実務 家としての経験を加味した見解を示すことが多い。本来,交際費課 税は制限的であり,容認される幅は極めて短いと思われるから,い わば隙間をぬうような納税者の主張であっても,否定的な判断が出 てくることは予想がつくといえよう。

 実務に接する機会があっても,納税者と課税庁の相反する見解を 客観的な見地から検討することは少ない。その意味で,最終的な判 断は残念ながら納税者の主張に対するる理解が乏しいことは否めない が,判例及び裁決事例で示された事実や事情,当事者の理解と認識 を参考にすることは極めて有益と思う。

 そのため,日常的に発生し,検討されるべき内容が豊かな交際費 課税に付する判例及び裁決事例の傾向について,以前から気になっ ていた。

 しかしながら実際に検索してみると思いの外少ない。つまり,昭 和50年以降で,「裁決〜訴訟」,「1審〜控訴・上告審」の同一事案 を1組と数え,しかも検討に値し,あわせて解説の手掛かりに必要 な当事者の考えが記載してある事案となると,限られてくる。本書 では,それらの中から50編の事案を選び,それらを参考にして交際 費課税の事例研究を行っている。

 交際費課税のリーディング・ケースとされる「ドライブイン事件」 の第1審判決が昭和50年6月24日であった。事例の検索を,昭和50 年以降と時期を区切ったのは,この昭和50年が交際費課税に対する 納税者の視野が広がった意識改革の時期と考えるからである。

 そうなるといささか個人的な想い出であるが,日本税法学会関東 地区研究会でご指導をいただく機会の多かった故高梨克彦先生が, この「ドライブイン事件」の納税者代理人であったにもかかわらず, 先生ご自身から交際費課税の論理を直接,ご教示いただく機会を逃 したことは.慚愧に堪えない。

 本書は,『税経通信』2005年5月号から2007年5月号まで2年間 25回にわたって連載した「判例・裁決事例に学ぶ交際費課税」に加筆 訂正を加えて編集した。その間,税制改正によりいわゆる少額飲食 交際費制度の導入をみたが,‘交際費課税の本質には変更はないと考 えている。

 税経通信編集部の鈴木利美氏には,いつもながら連載企画の段階 からお世話になり,本書の出版にあたってもご理解を賜った。また 同編集部の吉富智子氏には,連載時から的確な示唆をいただき,ま た本書の編集におけるさまぎまなご助力に感謝するしだいである。

 『税経通信』の連載においては,四方田 彰税理士と角田敬子税理 士がそれぞれ分担執筆し,それを私が修正した体裁で寄塙してきた。 本書の編集もその方法を踏襲していることから,各事実の結論につ いては,多分に私の見解が反映している。したがって最終的な責任 については,すべて私に帰するものである。

 四方田,角田両税理士とは,それぞれ時期は異なるが,ともに両 名が学部時代に私が担当した「租税法」の講義を履修したことで出 会った。今後も新進気鋭の税法研究者として,また実務家としてよ り一層の精進を期待したい。

 最後に,われわれ3名が出会うチャンスを作っていただいた共通 の恩師東洋大学名誉教授・西九州大学客員教授 坂田期雄先生が, 喜寿を越えられても変わらず執筆・講演活動に精進されていること を感謝と共に喜ぶことをお許し頂きたい。

2007年6月

著者を代表して

 林 仲宣



目 次

はしがき
 
第1部 交際費課税の概要と論理
 
1 交際費課税の趣旨
2 交際費課税の原則
3 交際費課税の体系
4 交際費の定義
5 交際費課税の対象外となる交際費
6 交際費課税の展望
 
 
第2部 判例・裁決事例
 
◎ 参考事例一覧表
 
事例1 交際費の概念
 −不動産の等価交換による時価との差額と交際費− 
事例2「事業に関係のある者」の範囲
 −抽選会の景品費用として支出した金員の性格−
事例3 事業関係者の範囲と費用の対価性
 −観光バス運転手への心付けと交際費−
事例4 支払の慣行と対価の認識
 −バス運転手等へのチップ−
事例5 業務との関連性
 −ゴルフプレー費用−
事例6 「その他これらに類する行為」の意義
 −英文添削費用の差額負担−
事例7 費用に占める交際費の要素
 −ホステス引抜き費用−
事例8 役員の慰安としての交際費
 −ホステスの募集費用−
事例9 少額支出の交際費
 −交際費課税の要件と支出額の多寡による判定−
事例10 交際費支出の主体
 −交際費支出の相手方に関する客観的資料の提示−
事例11 交際費の共同支出
 −共同支出の認定と限界−
事例12 交際費,寄附金,福利厚生費の関連性
 −グループ3社の共同社員旅行−
事例13 交際費支出先の開示
 −交際費支出先の不開示と交際費の意義−
事例14 交際費等の対象者の範囲と福利厚生費
 −代表者ひとりの飲食代と費用性−
事例15 事業関連性と交際費・福利厚生費の範囲
 −役員家族の米寿祝いの費用−
事例16 「事業に関係のある者」と福利厚生費
 −一部の役員及び従業員の飲食費用−
事例17 交際費と福利厚生費の境界
 −従業員への酒食の提供−
事例18 福利厚生費と交際費の限界
 −海外慰安流行の費用−
事例19 福利厚生費と交際費の区分
 −忘年会等の費用−
事例20 交際費と会議費の区分
 −打合わせの際の飲食代−
事例21 会議費の意義
 −会議の場所と飲食行為−
事例22 会議.打合わせの費用と交際費
 −得意先との打合わせ等に要した飲食の内容と範囲−
事例23 会議関連費の範囲
 −代理店を会議と慰安のために温泉旅館に招待した費用と会議の実体−
事例24 研修費・会議費の意義
 −採用内定者事前研修懇親会旅行の費用性−
事例25 販売促進と獲得・供応の限界
 −工場見学者への交通費−
事例26 工場見学の招待費用
 −工場見学に通常要する費用と観光旅行−
事例27 研修を前提とした工場見学の費用
 −得意先団体役員等の工場見学の性格−
事例28 交際費と広告宣伝費
 −宣伝パンフレット添付の茶葉−
事例29 交際費と広告宣伝費の区分
 −花輪代−
事例30 取引先に付する贈答費用と広告宣伝的効果
 −お中元・お歳暮としての贈答費−
事例31 広告宣伝費の限界と交際費
 −謝恩セールの景品−
事例32 不特定多数の者の範囲と広告宣伝費の限界
 −得意先招待流行−
事例33 「不特定多数の者」の意義と広告宣伝効果
 −商品券・ビール券の購入費用−
事例34 広告宣伝費の対象と交際費の対象
 −ボックスシート購入代金−
事例35 交際費と福利厚生費の範囲
 −創立記念パーティー−
事例36 工事竣工披露式典費用と交際費
 −落成式における飲食費用−
事例37 結婚披露宴費用
 −法人代表者の結婚披露宴費用の損金性−
事例38 会葬者への追善供養
 −社葬費用の範囲−
事例39 交際費の趣旨と二重課税
 −記念行事の費用と祝儀−
事例40 交際費課税の趣旨と計算方法
 −祝儀等の受贈とパーティー費用−
事例41 交際費課税の範囲と交際費控除の限界
 −祝儀収入と交際費の趣旨−
事例42 売上値引と交際費
 −売上値引の計算・方法及び立証と交際費との境界−
事例43 売上割戻しと交際費
 −代理店への表彰−
事例44 情報提供料
 −手教科と交際費の区分−
事例45 寄附金と交際費
 −政治団体への支出−
事例46 交際費としての談合金の位置付け
 一共同企業体における外注費−
事例47 入札謝礼金の性格
 −入札謝礼として支払われた外注費と交際費の差異−
事例48 交際費の範囲と賄賂の性格
 −賄賂金−
事例49 交際費の支出の具体性
 −暴力団等への支払−
事例50 交際費の範囲と使途不明金
 −支出先不明の機密費−
 
第3部 交際費課税の関係法令・通達等
 
租税特別措置法
所得税法
租税特別措置法施行令
租税特別措置法施行規則
租税特別措置法関係通達
所得税基本通達
法人税基本通達
交際費等(飲食費)に関するQ&A
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