書籍詳細のご紹介
わかりやすい労働契約法


わかりやすい労働契約法
 
編著者
野川忍
発行所
商事法務
定価
1,680円(税込)
ISBN
978-4-7857-1497-0
発行日
2007年12月22日
判型
B6
頁数
214
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主な内容

はじめに

 「雇用は契約である」。

 この原則を明確に示した「労働契約法」が、平成19年(2007)年11月28日、難産の末に 誕生しました。施行は公布の日から3ヶ月以内とされていますが、本書の脱稿時点では、まだ 明らかではありません。

 できあがった法律は、本体がわずか19条の大変小さく目立たない内容です。しかし、こ の未成熟な法律は、個別労働紛争予防を主たる目的とするものであり、今後の展開によっては 労働基準法や労働組合法に匹敵する法律となる可能性を秘めています。

 そもそも、本書を手にしておられる読者のうちどれほどの方が、「会社と従業員とは、 法的には、『組織とその構成員』なのではなく、対等の権利をもつ契約関係の当事者である」 という認識をお持ちでしょうか。

 実際には、明治時代に民法が制定された当初から100年以上、ずっと雇用(雇傭)は 「契約」でした。契約である以上、会社と従業員、つまり使用者と労働者とは対等な関係であ り、両者の間に何か「義務」が生じるとすれば、法律が直接規定している場合以外は「合意」 が根拠となるということです。

 しかし、日本の雇用社会においては、この原則がほとんど失念され、「会社に就職したら、 組織の一員として就業規則や人事権に服しなければならない」と考えられているのが通常です。 かえって、「契約社員」などという概念が定着し、あたかも「契約社員」以外の社員は会社と 契約関係にはないかのような誤解を増大させています。

 この労働契約法が成立したことにより、ようやく日本の雇用社会にも、雇用が契約である という原則に立脚した本格的な改革が始まることでしょう。そして、現在検討が進められている 民法の債権法大改正が実現すれば、そのなかの「雇用契約」の部分とこの「労働契約法」とが 合体し、新しいグローバルスタンダードとしての「雇用契約法」の制定が実現することと思い ます。

 本書では、雇用社会の抜本的な改革につながる可能性を秘めたこの法律につき、単に内容 を解説するだけではなく、「なぜ」、「どうして」という疑問に答えながらその意義を明らかに するように努めました。本書の誕生が、労働者・使用者を問わず、雇用社会に生きるすべての 人々にとって有益な糧となれば幸いです。

 なお、本書の発刊と同時に、労働法の全分野を対象とするわかりやすいテキストである 『労働法』を上梓しています。この姉妹書と内容的に重複する部分があることを了解いただけ れば幸いです。

 本書は、労働契約法の成立と同時に刊行すべく、全体の構成・資料収集・校正事務の一切 を担当してくれた編集者と「チーム労働契約法」を結成して書き上げたものです。筆者を叱咤激 励しながら完成に協力してくださった商事法務の浅沼亨氏、大久保文雄氏、水石曜一郎氏に心か らの感謝の意を表したいと思います。

2007年クリスマスを前に

野川 忍

 


もくじ
 第1章 なぜ今、労働契約法なのか
 第1節 労働契約法とは要するにどんな法律か
 第2節 「わかりにくい労働契約法」の理由
 
 第2章 労働契約法が必要とされた理由
 第1節 民法から労基法へ
 第2節 なぜ労働契約法が必要とされなかったか
 
 第3章 労働契約法ができるまで
 第1節 労働契約法制定の背景
 第2節 発端
 第3節 研究会の議論
 第4節 審議会の議論
 
 
 第4章 労働契約法の中身
 第1節 全体の構造
 第2節 総則
 第3節 労働契約の成立および変更
 第4節 労働契約の継続および終了
 
 
 第5章 資料編
 
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